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世界の都市見聞録@

「ニューヨーク」






 

1.ニューヨークは中心市街地の理想街区

 今、わが国で中心市街地のあり方が問われています。中心市街地とは何か!!を研究するには、アメリカのニューヨークを研究することが一番適切です。アメリカは、自由経済社会です。アメリカでは競争の中で、生活者の意図が反映された都市構造が構築されています。ヨーロッパはEUになって規制が緩和されつつありますが、基本的には規制経済社会です。それゆえに、ヨーロッパの都市構造は必ずしも生活者の意図が反映された都市構造にはなっていません。例えば、20世紀が生んだ最強の商業業態であり、小売業の50%以上の売上をアメリカで占めているSCの洗礼を、ヨーロッパの商業は受けていません。今後、ヨーロッパの商業はSCの洗礼を受けることにより、商業構造や都市構造が大きく変化することが想定されます。日本は1991年以降の旧大店法の緩和(2000年廃止)により、この15年間、SCの洗礼を受け、大都市及び地方都市の商業構造及び都市構造に急激なる変化が起こりました。日本の三大都市圏は大量交通手段等の整備による都市構造であるため、中心市街地はアメリカとは立地条件が異なり「非アメリカ型の商業構造」になります。一方、三大都市圏以外の地方都市は、完全なる車社会であるため「アメリカ型の商業構造」になっています。「都心商業に対する郊外商業基軸の原則」が流通理論の中にあります(六車流:流通理論)。すなわち、都心商業(中心市街地商業)と郊外商業が同じレベルで競争すると、郊外商業が勝つ。ゆえに、都心商業は郊外商業が真似の出来ない異質型の商業でないと、郊外商業に切り崩される…との考え方です。
 その結果、アメリカではニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコを除く多くの都市の中心市街地は、郊外商業であるSCに切り崩され、崩壊しています。日本でも郊外にSCが進出することにより、郊外商業との異質性を確保できない中心市街地は次々と崩壊して、街区の形をなしていない空洞化した都心があちこちで見られます。そこで、日本でも中心市街地の再生計画である「まちづくり三法」が制定され、中心市街地の活性化計画が行政サイド(一種の規制)から行われようとしています。
 アメリカでは多くの中心市街地が郊外のSCに切り崩されて崩壊したにもかかわらず、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコの3ヶ所のみが残っており、その中でも、ニューヨークは勝ちパターンの中心市街地であり、中心市街地を研究するにはニューヨークが一番です(決してヨーロッパの中心市街地が今後の日本の中心市街地のモデルとはなりません)。すなわち、ニューヨークは「中心市街地のノウハウの宝庫」なのです。アメリカの完全なる車社会の中で、ニューヨークの中心市街地は、世界一の勝ちパターンとして存在しているのです。
 ニューヨークは車社会の中で、郊外の商業とは異なる商業構造が成り立っており、郊外商業(SC)との異質型街区として確立されています。それは、車社会というアメリカ型立地と、大量交通手段(徒歩・自転車、電車、車の3分の1ずつの社会)の日本型・ヨーロッパ型立地の、2つの異なる立地を背景として成り立っている貴重な都市なのです。それゆえに、中心市街地として理想的(?)な形が成り立っているのです。郊外のSCは分散型商業(同じ様な性格の商業が、商圏規模に応じて分散立地)、中心市街地の商業は集中型商業(1つのエリアの中で、1つだけ成り立つ異質型商業)です。
 ニューヨークの都市圏(2,000万人)は、都心商業と郊外商業が互いに異質性を保ち、互いに棲み分けた商業構造となっており、郊外SC(商業)も充実し、都心商業も充実した、客から見て理想的な形になっています。だからこそ、中心市街地のあり方を問う場合、規制によって成り立っているヨーロッパの中心市街地ではなく、客の意図によって都心と郊外の商業が見事に棲み分けて成り立っているニューヨークの中心市街地こそ、本物の中心市街地の商業が見られるのです。

2.ニューヨークの都市構造特性

ニューヨークは、理想的(?)な中心市街地が形成されています。中心市街地は郊外商業との異質化及び中心市街地の独自性の確立のため、理論的には次の6つのゾーンが必要です(六車流:流通理論)。

第1
商業街区
広域商圏を有し、かつ、郊外商業とは異質性を持った都市型商業街区
第2
オフィス街区
業務としての中心街であり、オフィス及びオフィスワーカー中心の都市型オフィス街区
第3
歓楽街区
単なる買物中心の街区ではなく、飲食+アミューズメント+ナイトレジャーを含めた都市型歓楽街
第4
文化街区
美術館や博物館、歴史館、劇場等の独特の文化街区
第5
パーク街区
中心街には公園、河川、池、湖、城、広場等のパーク街区。都心のやすらぎの場としての役割を持つ
第6
都市型住宅街区
郊外ではなく、中心市街地に居住する住民の住宅街区

 すなわち、中心市街地の都市構造は、上記のように理論的には6つの街区(ゾーン)から成り立っており、この複合・融合機能が、中心市街地としての独自の風格を保持し、郊外商業との差異化を確立しています。
 世界最強の中心市街地である、ニューヨークのマンハッタン地区を事例で示すと、次の通りです(ただし、各街区はゾーン単位で明確に区分されているのではなく、混在した形で立地しています)。

@商業街区
  ニューヨークの五番街、マディソン街、レキシントン街、さらにはソーホー街区には、郊外商業には真似の出来ない特化百貨店やメガストア(旗艦店)や世界のハイファッション街が形成されています。文字通り、世界一の商業街区です。

Aオフィス街区
  マンハッタン街区全体に超高層階のオフィスビルが数多く建っており、文字通り世界の金融業や各企業のオフィスから形成される、シビック街区です。

B歓楽街区
  タイムズスクエアやロックフェラー・センターを中心とするミッドタウンには、テーマカフェやグルメな飲食、アミューズメント、シアターを中心とした歓楽街区が形成されています。

C文化街区
  メトロポリタン美術館、近代美術館、グッゲンハイム美術館、アメリカ自然史博物館、さらにタイムズスクエア周辺には、40以上の劇場に世界から注目を集めるミュージカルが上演されています。

Dパーク街区
  ニューヨークの公園と言えばセントラルパーク、人工パーク街区としてはロックフェラー・センター、さらにベイエリアにはサウス・ストリート・シーポートやバッテリーパークがあります。

E都市型住宅街区
  ニューヨークは、徒歩・自転車と車と電車(地下鉄)の3分の1ずつの交通手段の街です。車を持たなくても生活できる数少ないアメリカの都市です。それゆえに、ニューヨークの中心市街地には多くの人々が生活しています。いわゆる夜間人口の多い、生きた都市です。

 以上のように、ニューヨークは中心市街地が必要とする街区を、世界一級のレベルで確立しています。しかも、規制ではなく自由主義経済の中で生まれた中心市街地なのです。

3.ニューヨークの商業構造特性

 ニューヨーク都市圏の商業構造は、都心商業と郊外商業が見事に棲み分け、共存共栄している理想的な形になっています。 流通理論の中に、「都心商業に対する郊外商業基軸の原則」があります。都心商業と郊外商業が同じレベルで競争すると、郊外商業が勝つ。それゆえに、都心商業は郊外商業が真似の出来ない異質型の商業を形成しないと、郊外商業に切り崩されることになる…という理論です。 中心市街地が独自性を持ち、郊外商業に切り崩されないためには、理論的には次の5つの商業タイプが必要です(六車流:流通理論)。

第1
巨大百貨店
特化スペシャリティ百貨店
一般の百貨店は郊外でも成立しますが、巨大百貨店や特化スペシャリティ百貨店は都心でないと、郊外では成立しません。
第2
ナショナルチェーンの旗艦店
(フラッグショップ)
多くのチェーン店は郊外でも成立しますが、旗艦型の巨大店は都心でないと、郊外では成立しません。
第3
有名・高級専門店街区
有名・高級専門店は個々には郊外やSCで成立しますが、集団・街区の"かたまり"としては都心でないと、郊外では成立しません。
第4
エンターテインメント性の
高い歓楽街
エンターテインメント機能は郊外でも成立しますが、特に歓楽街的エンターテインメントは都心でないと、郊外では成立しません。
第5
利便性商業街区
基本的には郊外と同じレベルの商業ですが、都心に住む住民や都心で働くワーカーを対象とした、利便型商業です。

 すなわち、中心市街地の商業構造は、上記のように理論的には5つのタイプから成り立っていますが、それぞれは郊外商業には真似のできない、郊外商業とは異質性のある中心市街地の商業が成立の条件です。
 世界最強の中心市街地である、ニューヨークのマンハッタン地区を事例で示すと、次の通りです。

@巨大百貨店、特化スペシャリティ百貨店
 ニューヨークの中心市街地には、郊外のSCの核店とは異なる性格を持った百貨店が立地しています。世界一の規模をもつ巨大百貨店のメイシーズ、超高級百貨店のブルーミングデールズ、サックス・フィフス・アヴェニュー、バーグドーフ・グッドマン、バーニーズ・ニューヨーク、また、ヤング志向百貨店のブルーミングデールズのソーホー店が立地し、郊外の百貨店とは明確に異なるポジショニングを確立しています。

Aナショナルチェーンの旗艦店
 郊外のSCのテナントとは規模的に3〜5倍の旗艦店として、ナイキタウン、ディズニーストア、FAOシュワルツ、トイザらスニューヨーク店、クレート&バレル、アバクロンビ&フィッチ、H&M等が立地し、郊外の店とは明らかに異なるポジショニングを形成しています。

B有名・高級専門店
 ニューヨークを代表する五番街、マディソン街、レキシントン街、ソーホー街にはアメリカのみならず世界の有名・高級専門店が立地し、郊外では成立しない"有名・高級専門店のかたまり"街区が形成されています。

Cエンターテインメント性の高い歓楽街
 タイムズスクエアやロックフェラー・センターを中心とするミッドタウン地区に飲食、アミューズメント、劇場…等のエンターテインメント街が、郊外では真似の出来ないレベルで成立しています。

D利便性商業街区
 多くのコンビニエンスストア、レストラン、ホームデポ、ホールフーズ、SM、食品専門店が、居住者やワーカーをターゲットとして成り立っています。

4.ニューヨークは2.0体制の街区

 中心市街地の商業街区は、通常、4つの性格を持つ街区から成り立っています(六車流:流通理論)。

   
東京の事例
大阪の事例
第1の街区
基軸街区
渋谷、新宿、池袋、銀座 梅田、難波・心斎橋
第2の街区
準基軸街区
上野、品川 阿倍野・天王寺、京橋
第3の街区
特化街区
六本木、秋葉原、原宿、巣鴨 北堀江、道頓堀、アメリカ村、デンデンタウン
第4の街区
新都心街区
お台場、みなとみらい 梅田北ヤード、ハーバーランド


 上記ように、中心市街地は街区の性格によって4つの街区で成り立っており、東京は4.0体制(渋谷、新宿、池袋、銀座)、大阪は2.5体制(梅田、難波・心斎橋の2.0と阿倍野の0.5)、名古屋は2.0体制(名駅、栄)によって成り立っています。
 では、ニューヨークの中心市街地は、どのような性格の街区から形成されているのでしょうか。

@ミッドタウン街区とアッパー・イースト街区
 タイムズスクエアやロックフェラー・センターを中心とするセントラルパーク南側の商業街区はミッドタウンと呼ばれ、また、セントラルパークの東側の五番街、マディソン街、レキシントン街はアッパー・イースト街区(ミッドタウンに対しアップタウンと言われる街区がアッパー・ウェストとアッパー・イースト街区であり、そのうちアッパー・イーストに商業街区が集中している)であり、2つの街区は性格は異なるが回遊性があり、1つの巨大・特化街区を形成しています。

Aソーホー街区
 ソーホー(SOHO)はもともと倉庫街であったが、家賃の安さからアトリエとして使われるようになってアーティストの街に姿を変え、今やニューヨークのトレンド発信地となっています。ソーホーはハウストン通りの南側(South of Houston)から名称づけられ、洗練されたブティックやレストラン、フリーマーケットが多く、ミッドタウン街区やアッパー・イースト街区とは異質な存在となっています。 また、周辺にチャイナタウンやリトル・イタリーが隣接しており、広義のソーホー街区を形成しています。

 以上のように、ニューヨークの中心市街地は、ミッドタウン・アップタウンの街区と、ソーホー街区の2.0体制の街区(ミッドタウンとアッパー・イーストを2.0とすると3.0体制)で形成されています。元々、ソーホー街区は「特化街区」として出発し、今やニューヨークを代表する基軸街区に発展しています。また、チャイナタウンやリトル・イタリー、さらにサウス・ストリート・シーポート(ピア17を中心としたフェスティバルセンター)が現在の特化街区を形成しています。さらに、新都心街区は、ロウアー・マンハッタン(シビックセンター等)と呼ばれ、同時多発テロで崩壊したツインタワーのあるワールドトレードセンターでしたが、現在は跡地に新たな開発が進行中であり、文字通り、ニューヨークの新都心街区となります。
 このように、どのような都心でも、街区の性格の4パターンに当てはまります。
 また、中心市街地の商業ニーズは、「アーバン・リゾートニーズ」(わざわざ郊外や他都市から遊楽目的を持って来街する来街者から派生するニーズ)と「アーバン・コンビニエンスニーズ」(都心で働くワーカーや、都心に居住する市民から派生するニーズ)の2つのニーズから成り立っています。
 ニューヨークの中心市街地には、ニュージャージーやブルックリン、クイーンズ等の郊外からの遊楽ニーズ、また、外国や地方都市からの観光ニーズであるアーバン・リゾートニーズがあります。さらに、マンハッタンに勤めるワーカーや、居住する住民からのアーバン・コンビニエンスニーズがあります。  
事例的には、アーバン・リゾートニーズとアーバン・コンビニエンスニーズの割合は「50:50」です。


 
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