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世界の都市見聞録C

「エドモントン」





 

 私は、年3回の弊社主催の「ダイナミック海外研修視察ツアー」(10日間)が終わったあと、毎回「1人旅」(5日間)を行っています。今回(第33回視察・研修ツアーの後)の1人旅は、カナダの「エドモントン」、「トロント」、「ウィニペグ」の3都市を視察・研修しました。私が、カナダの都市を視察先に選んだ理由は、アメリカの中心市街地崩壊社会とヨーロッパの中心市街地中心社会(ただし規制による中心市街地)に対して、カナダは中間の位置付けの社会であり、適度に中心市街地を保ちながら、郊外の車社会に対応した商業が確立しているからです。事実、カナダ色の強い「バンクーバー」や「シアトル」や「ポートランド」は、アメリカとカナダの中間の商業的特色を持っていますが、今回はもっとカナダ色(ヨーロッパ色)の強いエドモントン、トロント、ウィニペグを視察に行きました。 エドモントン市は、カナダのアルバータ州の州都であり、2006年の統計によると人口73万人、都市圏人口103万人で、アルバータ州ではオリンピックで有名なカルガリー市に次ぐ第2位の都市です。肥沃な農村地帯が広がるプレーリー(大平原)地帯であり、州北郊のオイルサンド産業と大規模なダイヤモンド鉱への玄関口となっています。 エドモントンは、「ザ・フェスティバル・シティ」と呼ばれるほど年間を通じてイベント行事があり、また、北米最大のショッピングモール「ウエスト・エドモントン・モール」と最大の歴史公園「フォート・エドモントン」があります。 1.ウエスト・エドモントン・モール 我々商業に関わる者として、ウエスト・エドモントン・モールは最大級の関心事の施設です。ウエスト・エドモントン・モールは1981年にオープンし、1981年から23年間、世界最大のモールでした。

<ウエスト・エドモントン・モールの概要>

オープン
1981年(その後1983年、1985年、1998年に増床リニューアル)
SCの業態
エンターテインメント型ショッピングセンター
総面積
57万u(延床)
店舗数
800店(物販+飲食+サービス+アミューズメント)
駐車台数
20,000台
主な施設
・核店(ザベイ、シアーズ、ゼラーズ他3店)
・ギャラクシーランド、ワールドウォーターパーク、アイスプレイス、ディープシーアドベンチャー、チャイナタウン、ミニゴルフ場、シネマコンプレックス(21スクリーン)、室内ライフル射撃場、ふれあい動物園…等
・ファンタジーランドホテル

ウエスト・エドモントン・モールの特色は次の通りです。

@巨大なエンターテインメント型SC
 総面積57uは、アメリカ最大のエンクローズドモールである「モール・オブ・アメリカ」(総面積39万u)を上回っています。ウエスト・エドモントン・モールは、SCというよりエンターテインメントセンター(アミューズメント+レストラン+レジャー施設と物販が一体化した複合商業施設)です。集客のベクトルも、物販よりエンターテインメントパワーの方が、遥かに勝っています。テナント数は800店、うち、レストランは100店舗以上で形成されています。ウエスト・エドモントン・モールの集客のベクトルであるエンターテインメント施設は、「ギャラクシーランド」、「ギャラクシーキッズプレイパーク」、「ワールドウォーターパーク」、「アイスパレス」、「ディープシーアドベンチャー」、「シネマコンプレックス」、「ミニゴルフ場」、「室内ライフル射撃場」、「ふれあい動物園」、「チャイナタウン」から成り立っています。
 次いで、集客ベクトルである物販施設は、6つの核店である「ザベイ」、「シアーズ」、「ゼラーズ」、「ザブリックスウェアハウス」、「ロンドンドラッグス」、「ウィナーズ」と、620の物販テナントから形成されています。それ以外にホテルもあり、エドモントンのザ・フェスティバル・シティに対応したエンターテインメント型SCです。

Aもてあそばれ型SC
 ウエスト・エドモントン・モールは、典型的なもてあそばれ型SCです。もてあそばれ型SCとは、「人は集まるが物は売れないSC」「日祝日は良いが平日はサッパリのSC」「飲食は売れるが物販は苦戦しているSC」で、客は喜んでいるが、「デベロッパーもテナントも泣いているSC」のことです(六車流:流通理論)。
 アメリカの1990年代はエンターテインメントを核要素として成長した時代であり、物販3分の1、飲食3分の1、アミューズメント3分の1のエンターテインメントセンターが繁盛しましたが、今は全く廃れています。逆に日本は、2000年代がエンターテインメントを核要素として成長する時代です。日本のRSC(多核・モール型SC)は、物販力よりエンターテインメント性(レストラン街、フードコート、シネコン、アミューズメント、ウィンドウ&ランブリングショッピングのサバーバンリゾートニーズ)で集客しているため、もてあそばれ型SCの要因が強くなり、客単価が著しく低くなっているのが現状です。
 そもそも私が「もてあそばれ型SC」という流通理論を考え出した基は、1989年にウエスト・エドモントン・モールを見て、エンターテインメントゾーンはにぎわっていましたが、物販ゾーン、特に核店が散々であったことから命名しました。私は今回、その後のウエスト・エドモントン・モールの、もてあそばれ型SCの性格はどのようになっているのかを検証しに行きました。やはり、日曜日と平日の人の数は大幅に異なり、また、飲食は繁盛していますが(特に日曜日)、物販はウェム・ストリートのウエスト&イースト(中央のストリート)の特定のゾーンのにぎわいしかなく、アミューズメント施設やレジャー施設周辺の物販テナントは、かなり苦戦しているように見えました。また、核店であるシアーズとザベイとゼラーズが形成するゾーンは全くにぎわいがなく、エンターテインメントで集客した客は物を買わない性格があることを物語っています。しかし、核店の入れ替えやテナントの入れ替え、新たにチャイナタウンを導入するなどして、前よりも良くなった感じがします。

Bエドモントン都市圏で圧倒的一番店のSC
 ウエスト・エドモントン・モールは、エドモントン都市圏103万人の中で、SCの規模及び集客で圧倒的一番店型SCのポジショニングを確立しており、bQの存在を許さない状況です。ウエスト・エドモントン・モール以外のSCは、規模的にもレベル的にもウエスト・エドモントン・モールにSCの覇権を握られており、たいしたSCは存在しません。ただ、ダウンタウンに「シティ・センター」(ベイ百貨店と複数のサブ核、160の専門店、9スクリーンシアター)が、ワーカーニーズとパーソナルニーズを対象に成り立っています。
 その意味においてウエスト・エドモントン・モールは、エドモントン都市圏の圧倒的一番店型SCというポジショニングで、エンターテインメントニーズ以外の物販で圧勝することができれば、物販も高業績で成り立つSCになることが可能です。

C超広域圏のレジャリーニーズに対応したSC
 エドモントン都市圏の103万人の商圏人口では、ウエスト・エドモントン・モールの規模及びエンターテインメント施設は成り立ちません。エドモントンの都市圏以外にカナダには巨大な田舎があり、年に何回かのレジャリーショッピング(遊びを兼ねた買物行動)のマーケットが著しく多いことが想定されます。それゆえに、高速道路を使って8〜10時間ぐらいの範囲内からも来街しているレジャリーショッピングニーズが過分に存在していることが成立性を助けています。また、エドモントン市のフェスティバル・シティによるイベント目的客や観光客の存在があり、そのこともウエスト・エドモントン・モールの成立性を高めています。

2.モール・オブ・アメリカとの比較
 ウエスト・エドモントン・モールと同じタイプのエンターテインメント型SCとして、アメリカのミネアポリスに「モール・オブ・アメリカ」があります。

<モール・オブ・アメリカの概要>

オープン
1992年
SCの業態
エンターテインメント型ショッピングセンター
規  模
延床面積
39万u
総リース面積
23万u
店舗数
520店(物販+飲食+サービス+アミューズメント)(うちレストラン・フードコート86店)
駐車台数
12,550台
主な施設
・核店舗(ブルーミングデールズ、ノードストローム、メーシーズ、シアーズ)
・レジャー施設(巨大遊園地、水族館、14スクリーンのシネマコンプレックス)
将来計画
3年後に現在の2倍になり、世界最大のエンクローズドモール型のエンターテインメント&ショッピングセンターを予定している。

 モール・オブ・アメリカとウエスト・エドモントン・モールは同じエンターテインメント型ショッピングセンターです。モール・オブ・アメリカとウエスト・エドモントン・モールの物販の規模は、核店揃え(ウエスト・エドモントン・モールは3核+3サブ核に対し、モール・オブ・アメリカは4核体制)、物販テナント揃え(ウエスト・エドモントン・モールの620店に対し、モール・オブ・アメリカは435店)、レストラン揃え(ウエスト・エドモントン・モールは100店、モール・オブ・アメリカは86店)と、ウエスト・エドモントン・モールが上回るものの、極端な差はありません。しかしレジャー&エンターテインメントの規模及び施設の多様性・リゾート性の強さにおいて、ウエスト・エドモントン・モールが圧倒的に上回っています。それゆえに、モール・オブ・アメリカの「日常のレジャー型SC」に対し、ウエスト・エドモントン・モールは「非日常のリゾート型SC」と呼ぶことができます。ミネアポリス市の人口は38万人と少ないですが、ミネアポリス市・セントポール市(双子の都市)の都市圏人口は350万人であり、モール・オブ・アメリカの成立基礎マーケットは十分存在し、かつ、超広域の影響商圏(年に1〜2回の来街マーケット)も多く持っています。
 ウエスト・エドモントン・モールは、都市圏人口103万人では現状のウエスト・エドモントン・モールを成立させる基礎マーケット(本来ならば400万人が必要)が不足しており、必然的に超広域圏及び観光客に依存せざるを得なく、それが、非日常のリゾート性の強い性格のエンターテインメント型SCとならざるを得ない結果となっています。 モール・オブ・アメリカは、物販パワーとエンターテインメントパワーのバランスが比較的取れており、買物と遊びが一体化しています。
 モール・オブ・アメリカは、遊びも日常のレジャー性が強く、核店も中の上のノードストロームとブルーミングデールズ、中の中のメーシーズ、中の下のシアーズとバランスの取れた核店揃えであり、かつ、レイアウト的にも「遊園地を中央に、周辺をサーキットモール(800mの長さ)」として、遊びと買物がハード的にもソフト的にも一体化して、もてあそばれ型SCの持つ課題が比較的希薄化しています。
 遊びと買物が一体化したSC業態は「アウトレットモール(センター)」であり、チェルシー型アウトレットセンターとミルズ型アウトレットモールが、もてあそばれ型SCとならず、逆に、遊びと買物が相乗効果を発揮した業態となっています。
 ウエスト・エドモントン・モールは生い立ちからの課題であるもてあそばれ型SCを引きずりながら、エドモントン都市圏の圧倒的一番店型SCとして存続していることになるでしょう。


 
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