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世界の都市見聞録F

「デンバー」






 

 ― デンバーの中心市街地の復興と都心商業の成立のメカニズム―

 デンバーの中心市街地を10年ぶりに視察し、また宿泊もしました。この5〜6年は隣接都市でありロハスのメッカであるボルダーの視察とデンバー都市圏(郊外)のSC視察が中心でデンバーの中心市街地はあまり興味を持てませんでした。

 というのも、10年前のデンバー中心市街地は多くのアメリカの中心市街地と同様にスラム化が進み怖い街というイメージでした。デンバーの中心市街地にデンバーパビリオンというエンターテインメント型SCが開発されましたが、業績は今一歩の状態でした。

 デンバー都市圏人口は224万人であり、コロラド州の州都の地方拠点都市でもあります。今、デンバーの中心市街地がある意味で復興していることはイベント開催中とはいえ、中心市街地の人並みのにぎわいや10年前にレストランが5店舗しかなかったが、現在は100店立地している実態から見て事実です。

 では、デンバー等の中心市街地の復興と中心市街地での商業の成立のメカニズムを説明します。

 中心市街地の商業の成立のメカニズムは2つの面から成り立っています。 @1つは、中心市街地(都心)の商業が成立するメカニズムです Aもう1つは、中心市街地(都心)の商業を成立させるメカニズムです

(1)中心市街地(都心)の商業が「成立する」メカニズム

 日本の3大都市圏(東京都市圏、大阪都市圏、名古屋都市圏)の中心市街地は、都市圏人口1,000万人以上を有し、大量交通手段が網の目のごとく張り巡らされ人口は密集しており、また業務機能が充実していますのでアメリカ型の都心が崩壊する都市ではありません。一方、三大都市圏以外の中心市街地の車社会の中で大量交通手段の希薄な立地で人口密集度も低いため、まさにアメリカ型の中心市街地が崩壊する都市に類似しています。それゆえに、日本の三大都市圏以外の地域ではアメリカが持つ課題と共通点が多く見られるため、日米の比較において日本の事例は三大都市圏以外の地域で説明します。

 中心市街地(都心)の商業が成立するメカニズムには次の基本原則があります。

@都心商業に対する郊外商業基軸の原則 都心商業と郊外商業が同じレベルで競合すると郊外商業が勝つ。それゆえに、都心商業は郊外商業が真似できないレベルでないと成立しない…との原則で、別名「残り物商業理論=残り物に福がある理論」とも言います。

A都心商業のニーズ構造はアーバンリゾートニーズとアーバンコンビニエンスニーズが50:50の割合で存在するの原則

 ニーズがなければ商業は基本的に成り立ちません。郊外からわざわざ都心まで出向して買い物やレジャーをするニーズを「アーバンリゾートニーズ」と言います。また、都心のワーカー(働く人)のニーズや事業所からの派生ニーズ、さらにはビジターニーズ(仕事のついでに派生するニーズ)、駅の乗降客ニーズ、都心に住む住民から派生するニーズ等が都心の利便性のニーズであるため「アーバンコンビニエンスニーズ」と呼びます。

 実は都心はアーバンリゾートニーズとアーバンコンビニエンスニーズが50:50の割合で成り立っています。アーバンリゾートニーズは郊外商業が真似のできない魅力ある商業を開発すれば日祝日を中心に吸引できますが、アーバンコンビニエンスニーズがなければ都心商業は成立しません。つまり都心商業を成立させるためには、アーバンコンビニエンスニーズの存在が必要なのです。郊外で新都心街区を形成してもアーバンコンビニエンスニーズがないと売上が半分しか達成できない由縁です。

(2)中心市街地(都心)の商業を「成立させる」メカニズム

 中心市街地の商業は「郊外商業基軸の原則」と「アーバンリゾートニーズとアーバンコンビニエンスニーズの50:50の原則」が適用できれば成立の前提条件が整います。しかし、アメリカの多くの中心市街地(都心)は崩壊し、スラム化しているケースが多々あります。この崩壊してしまった中心市街地を復興させるためには2つの手法が必要となります。

@行政による中心市街地(都心)の復興支援 一度崩壊した都心は民間の経済努力による自然回復には時間とコストがかかり、むしろ民間的思考からみると都心への投資や進出は困難です。ところが、都心の商業は郊外の商業とは異なる内容を持った魅力のある買い場であり、郊外では真似のできない残り物には福がある商業でもあります。都心の復興のためには行政の中心市街地復興への計画の作成と商業施設の誘因手法、実現化に向けての強制的執行力、資金的支援、人的かつ商業成立ノウハウの支援、交通手段の充実(大量交通手段=電車やバスの充実や駐車場の設置)が必要となります。

Aタウンマネージメント機能の充実 都心の再生には行政の支援が必要ですが、都心の商業を維持・持続させるためにはSCのディベロッパーの存在と同じように、都心の商業全体の管理・育成するタウンマネージメント機能が必要となります。都心の商業街区の警備、清掃、駐車場の管理・運営、街や店舗の広告・宣伝、イベントの企画…等のまちの運営・管理が必要です。

 このように、中心市街地(都心)の商業を成立させるためには、中心市街地(都心)商業が成立するメカニズムと成立させるメカニズムの2つのメカニズムが必要です。日本では中心市街地の商業が成立するメカニズムを無視して、手段である中心市街地を成立させるメカニズム(行政の支援やタウンマネージメント機能)を先行したため「仏つくって魂入れず型の中心市街地の再開発」という手段先行型のまちづくりを行い、ほとんど失敗しているのが現状です。

 デンバーは都市人口(商圏人口に近いマーケット数値)224万人の地方拠点都市です。日本では「広域型商業地(T型)」(商圏人口200万人を有する拠点都市)であり、三大都市圏を除くと、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の4都市が相当し、4都市以外の準広域型商業地(T型)は、新潟市、金沢市、静岡市、岡山市、北九州市の5市が相当します。デンバー並の都市圏人口(商圏人口)を持つ日本の地方拠点の地方拠点の4都市(準都市を含めると9都市)とデンバーを比較すると、中心市街地の商業の充実度に大きな格差があります。つまり日本の200万人商圏都市は「ミニ東京街区」と呼ばれ、都心の商業は複数の百貨店、複数の専門店ビル、アミューズメント施設…等が充実しているのに対し、デンバーの都心商業はレストランやエンターテインメント施設が中心で、いわゆる商業拠点街区ではありません。その代わりに郊外に巨大な多核・モール型RSC(百貨店が3〜4店導入されテナントが100〜200のモール型SC)が多数立地しています。

 つまりデンバーの都心商業は都心商業に対する郊外商業基軸の原則に基づく「残りもの商業」(郊外には真似のできない)レジャー性、エンターテインメント性、リゾート性、観光性の強い商業街区で、日本の200万商圏のように「残りものには福がある商業」までなりきっていません。ただ、デンバーは地方拠点都市であるためオフィス機能が充実しており、アーバンコンビニエンスは存在しています。


 
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